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【関連動画】『気候危機で“うつに陥った”人たちの話』(韓国 中央日報)

気候不安ブロガーのパカンヌです。今回は韓国の大手新聞社、中央日報のYoutubeチャンネルの動画『気候危機で“うつに陥った”人たちの話』(2020/09/18)を取り上げます。気候不安(韓国では「気候うつ」という表現を使うようです)を感じる若者たちに、気候不安や気候危機についてインタビューしたものです。ここでは、インタビュー内容を各人ごとに再構成してご紹介します。


www.youtube.com

ヤン・ジュナ(20歳 大学生)

https://www.youtube.com/watch?v=B3c6TFXdSRE

小さい頃から、地球温暖化の話はよく耳にしてきました。環境に優しくあろうとすると、(日常生活で)制約を受けることが多いでしょう?小さい頃からずっと聞いてきた話だし、すごくうんざりしてしまって、しばらくは環境問題を避けて生きてました。

でも、大学に入って最初に会った友人たちが、偶然にも環境問題に関心のある人たちで。ナオミ・クラインの『これがすべてを変える』という本を読書会で一緒に勉強しながら、気候危機の深刻さを思い知ったんです。それまではこの問題を、「氷の上に座るホッキョクグマ」といったありふれたイメージでとらえてました。でも、この本では客観的なデータを示し、実際の事例にひたすら言及しながら環境問題の深刻さを説いているので、本当に心に響くんです。「残された時間は少ない」「僕たちが最後の世代になるかもしれない」ということを知ってからは、気候危機が僕の最優先課題になるしかありませんでした。これをどうにか解決しなければ、他のことをしても、すごく意味のないことのように感じられるんです。

(気候危機に目覚めた)当初は、それほど憂うつだったり、つらかったりはしませんでした。「今からでも何か一生懸命やらないと」と思って、ずっと行動しようとしてたんです。でも、気候危機には独特な点がある。それは、(ティッピングポイントまでの)時限が定められていることです。資料によって違いますが、科学者によって、それは5年後だったり8年後だったりします。とにかく、(残された)時間はすごく短い。「時限爆弾」と表現されるほどです。

でも、僕が危機感を持つようになって感じたのは、時限爆弾がチクタクチクタク動いてるのに、みんなあまりにのん気だということです。僕が何か行動を起こしても、周囲の人は変わらない。だから距離を感じて、孤立するようになりました。孤独になってしまったんです。

自分が周囲の人たちにとって「不便な存在」になったような気もしました。気候危機を解決するために個人にできることの1つに、菜食主義があります。だから僕は、最低限、肉は食べないようにすると決めて、以降ずっと菜食をしてます。でも、そうすると、周囲の人と会う時、いつも僕が「気を使う相手」になってしまう。「意識が高い」感じで、自分だけ肉を食べないでいるから。それがすごく不安で、疎外感を感じて、家に帰ったら憂うつになって…というのがずっと繰り返されてきたように思います。

大人世代は、僕たちよりも長く人生の喜怒哀楽を味わってきました。でも、10代20代の僕たちには、未来自体がなくなったのです。幼い時は、「大きくなったら何をどうしよう」「こういう家に住みたい」ということを考えるものですが、それ自体が無駄なことになってしまった。だから、より多くの10代20代が気候うつに陥るのだと思います。

気候危機は、個人の小さな行動で解決できる問題じゃありません。大量の炭素を排出してきた企業や、それらを庇護してきた政治権力に対して変化を要求しないと前に進みません。企業や政治を変えるのは僕たち自身です。だから、僕たちがもっと声を上げれば彼らを変えていけるという事実を伝えたい。たとえささいな変化だとしても、気候うつにさいなまれていた人たちが、その変化を目の当たりにして、「何かが変わってきてる」と感じ、うつから抜け出して行動に参加するとか、そういう形で少しずつ大きなうねりになっていけば、政治も変わっていくのではないでしょうか。

どうやって生計を立てるかという問題よりも根源的なのは、生きるか死ぬかという問題ですよね?毎日食べていくのに精いっぱいで気候危機に関心を持つ余裕がない、というのも分かります。でも僕は、人生における現実的な問題と気候危機の問題は、同じものとして考えてほしいと思います。

気候うつに陥ってしまったら、仲間たちとつながって、一緒に話し、悩み、行動するといいですよ。実際、1人でいる時が、一番気分が落ち込むので。

ユン・ソジョン(22歳 大学生)

https://www.youtube.com/watch?v=B3c6TFXdSRE

私が初めて気候危機に直面したのは、高校時代、東南アジアに住んでいた時です。そこは、乾季と雨季がはっきり分かれている地域でした。それが、いつしかこの区分がなくなって、いつでも雨が降り、台風が来襲するようになったんです。今回(2020年)韓国に来た台風くらい強いのが、ずっと周期的に来て、犠牲者も出ました。人的被害が出るのを目の当たりにし、気候危機を肌で感じました。

(気候うつになった)一番大きな原因は、「希望は完全に消えた」「未来が見えない」と、絶望を感じたことだと思います。(気候危機を)私はすごく深刻だと感じていて、しかも、異常気象が(その深刻さを)実証してくれてるのに、他の人たちは同じように受け止めてくれません。家族でさえ、「あの子また変なこと言ってるね」で終わってしまう。ネット上に書き込んでも、友達に話をしても、みんな自分のことで忙しいから興味を持たないし。(気候危機の)状況は深刻なのに、変化はまったく見えなくて、すごく脱力しました。

私が一番もどかしく感じるのが、今回のコロナウィルス、前回のMERS、昔(2009年)の新型インフルエンザ、それらすべてが動物たちが密集する畜舎から出たウィルスだということです。これら家畜を飼育する過程で排出される二酸化炭素量を考えると、気候危機も動物搾取産業(畜産業)のせいです。なのに、それについて声を上げようとすると、止められたり、信じてもらえなかったり、聞いてもらえなかったり。それで、私はさらにうつになって絶望し、どんどん希望を失っていくんです。疲れ果てます。

ミーアキャット(30歳 気候活動家)

https://www.youtube.com/watch?v=B3c6TFXdSRE

気候危機はただ「氷河が融けて海水面が上がる」だけで終わりじゃありません。いろんな影響が出る可能性があります。

(例えば)最近、韓国では梅雨が長くなりました。9月にも台風が襲来します。こんなふうに予測不可能なことが起こり続けるのです。オーストラリアでは山火事があったし、今、アメリカのカリフォルニアでも、前例のないくらい多くの山火事が起こってるといいます。それに、ある場所では、突然すごい豪雨から洪水になったかと思えば、ある場所では干ばつが起こる。バッタの群れが猛威を振るって食糧を食いつぶしたこともありました。気候変動の影響はあまりに広範囲なので、それをあらかじめ完璧に予測することもできないし、完璧に備えることもできない状況なのです。

気候危機が今、私たちの目の前に突き付けられているというのに、みんな、あまりに警戒心がなさすぎるのではないでしょうか。

私は、無力感やうつ、未来は今よりよくならないだろうという挫折感をたくさん味わってきました。少し寂しい気持ちもあるし、私たちが未来世代の資源を使ってることに、大きな罪悪感もあります。

体の症状としては、夜、眠れなくなりました。私の未来や私の周りの人たち、そしてこれから起きることについてしきりに考えてたら、「こうして一生懸命生きて何になるの?どうせ将来は災害に遭ってつらくなるのに。頑張ってお金を貯めたところで何の意味もない」となってしまって。

気候危機は私たち全員の責任だと思います。個人的には、特に未来世代に対して責任を感じます。なぜなら、これからもっと大きな災害が起こった時、そのすべてに耐えねばならないのは、私たちや未来世代だから。産業や経済はもちろん大事ですが、それ以前に、私たちが生きていかないといけません。気候危機は生存の問題だと思うんです。人類が未来においても果たして共存できるか、そういう問題ととらえて、みんなで立ち上がらねばなりません。

イ・ソル(22歳 非営利団体勤務フリーランサー)

https://www.youtube.com/watch?v=B3c6TFXdSRE

私が一番憂うつになったことは… 気候危機を止めるために、私や仲間たちは本当に一生懸命行動してます。だから、そうじゃない人たちを見ると、何というか、挫折を感じるんです。私は自分のためだけじゃなく、この地球に住むすべての人たちのために行動してる。でも他の人たちは自分のことなのに、気候危機に関心を持たず、ただ「今を楽しもう」と刹那的に生きてます。憂うつになりますね。

私はバケットリストを作るのがすごく好きなんです。実現できないとしても、作るだけで気分が上がるじゃないですか。でも、今、気候危機で社会が変わっていく中、個人的にも社会的にも、(バケットリストの中の)いくつもが叶えられなくなってしまった。そういう現実が、すごく悲しいし憂うつです。

カン・ダヨン(22歳 大学生)

https://www.youtube.com/watch?v=B3c6TFXdSRE

(気候うつで)1日に15~17時間寝込んだ日も本当に多いです。睡眠は十分にとれた気がするのに、起きられないんです。ただずっと横になっていたくて。

こういうことがあるんです。友達と会って遊んでる時も、いつも心の片隅では「こうして遊んでても、どうせ気候危機は存在していて、私は苦痛を受けることになるんだ」と考えてる。遊んでても、遊んでる感じがしません。(気候危機のことも)何も考えず、「私は本当に自由で希望がある」と思っていられたのは、遠い昔の話です。

(映像などで)1990年代の若者たちが青春を謳歌する様子を見ると、すごく楽しそうじゃないですか。でも私たちには(楽しい青春なんて)ありません。PM2.5に始まり、猛暑、洪水に梅雨(の異常)、と、もはやゆったりと自由を満喫していられないんです。

気候危機について話し合う討論会などに行くと、大人たちは言います。「君たち若者がいいアイデアを出して気候危機を解決しなさい」と。記事には、「私は十分生きた。地球が滅亡するのを見て死ぬつもりだ」という彼らのコメントが載ったりもします。人類愛もクソもない態度に、憤りを通り越して怒りを感じます。絶対、若者だけの問題じゃないのに。(このままでは)自分たちの老後だって危ないじゃないですか。(大人たちの無責任さには絶望して)頭の中が真っ白になります。

今回、政府から、気候危機へのいろんな対策が出ました。政府はすでに、石炭火力発電所を2050年までずっと稼働する考えを表明しています。そして一方では、“グリーン産業(グリーン・ニューディール)”で経済を活性化させるとも。本当に問題に取り組む気があるのでしょうか。努力する人は本当に努力してる。なのに、(政府が)変わる様子がないから、私たちはどんどん絶望していくんです。

人生を最大限、幸せに生きたいじゃないですか。みんな、そのためにたくさん努力してるはず。なのにどうして、人類を生存の危機に陥れる気候危機の問題は放置するのでしょう?

私たち1人ひとりが少しでも関心を持ち、そういう人たちが集まれば、大きな声になります。そのために、SNSは有効な手段です。まずは、気候危機に取り組む団体をフォローしてください。そこがスタートです。一緒に行動しましょう。

笑顔で憂うつな話をしましたが、最悪の事態は避けなければと思ってます。たくさんの人が気候危機に立ち向かう活動に参加してくださったらうれしいです。今、ここで希望を捨てるのは、つらすぎるので。

さいごに

今回取り上げた5人の若者たちは、気候不安を抱えて周囲の無理解に苦しむ中、同じような思いを抱える仲間とつながることで、不安から抜け出しました。そして、みんなで政治を変え、気候危機を解決しようと、アクションを起こしています。

個人的には、ヤン・ジュナさんの「環境のために菜食主義を貫こうとすると周囲の人に“意識高い人”と思われる」という発言が印象に残りました。本人は切実な思いで取り組んでるだけなのに、周囲の人に後ろめたく思われてしまう、というのは、日本でもありがちなことだと思います。

気候不安に取りつかれてるくせに、アクションは起こせていないという意識低い系のアラパカ、ならぬアラフィフのパカンヌですが、地球上の生き物みんなの未来のために、自分にできることを少しでもやらなければ、と改めて思いました💛

お棺に入る時に後悔したくないしね!

よかったら、あなたの気候不安についても、コメント欄やメールで教えていただけるとうれしいです。ご連絡お待ちしてます!